ほぼ同じ位置を軌道の上から撮ったが、かなり深い位置に軌道があることが判る。軌道の両脇はかっての広漠たる桑畑
で覆われいたが、1995年頃から工業誘致で大きく変貌し、八王子工業団地として現在に至る。
電気機器、音響光学、精密などや油圧機器、パワーショベルなど日本はもとより世界にも名を通る、先端産業も此処から
生まれる。

八王子駅を発車すると、間もなく右手に横浜線が分岐し、更に京王線を跨ぐ。列車は、思い切り左へカーブし中央本線から
分かれ、いよいよ「八高線」の一人旅になる。浅川を渡り、国道16号（八王子バイパス）を跨いで勾配を上っていく。八王子
中心街の専用軌道は高く積み上げられた土手の上を走っていたが、一転して低い位置を取り、国道20号（甲州街道）を潜る。
真っ直ぐ伸びる軌道の廻りは土手に覆われ、風景は遮られ、谷底を走り続ける。

左側の赤白の模様のタワーはエレベータの試験棟である。高層の建物が少ないだけに、この一つが目立ちがりやの構造物で、
常に視界の中に付いてまわり、富士山など周辺の山岳遠景に遠慮なく邪魔しにくる。墨田のスカイツリーは観光シンボルとして
人気を集めているが、無粋な八王子のスカイツリーは工場のシンボリックタワーである。列車はこの脇を通り、タワーを見上げな
がら西に向かう。

この谷間を登りきった所で、視界が開け、最初の到着である、「北八王子」駅の高架橋が見える。
軌道脇から北八王子駅付近。普段は閑散とした駅周辺であるが、通退勤時間はこの高架橋周辺に工業団地に行き交う通勤客で
賑やかになる。列車はゆっくり北八王子駅へ滑り込む。