黄色と青の派手なゲートがゴンドラの乗り入れ口である。niseko Mt. resort Grand HIRAFUとの英語表記は国際的なスキー場で
あろう。真冬なら賑わいを見せるゴンドラも、真夏のこの時期に訪れる人も少なく、空気を運ぶゴンドラがゴトゴトを音を立てながら
動いている。雪のないこの時期も、海抜1000mに近い所との、繋ぎ役を果たし、地上にはない俯瞰出来る眺望の世界とそこに
生息する動植物との出会いや観察に、四季を通じて働き続けている。

暫くすると、傾斜がきつくなる。グングン登り詰め、先程居たホテルや周辺の建物が遥か下に見下ろせ、周辺の視界が開け
素晴らしい眺望を楽しむ事が出来る。
ゴンドラの下は樹木が落とされ、雑草で覆われているが、明らかに滑降コースであろう。
ン十年前の青春時代に身の丈のあるスキーを履いて雪に戯れたが、こんな急斜面では転がれば、そのまま滑落し地獄の底
へまっしぐらであろう。
当時は雪煙を上げスラロームを描きながら、格好よく滑る「トニーザイラー」の姿に憧れ、銀世界にかけた一人ではあった。
いざ、雪面に立つと急斜面に越し引け、重心が山側に偏き、恐怖を克服できず、厚い壁に阻まれた。結局、スキーを操られず
に一向に伸びない限界に諦めてしまった。それでも怖いもの知らずの冒険心で仲間と競い合い、急斜面も厭わず、若さと、気
合で、雪だるまになって駆け降りたことが昨日のように思い起こされる。現実に振り返ってゴンドラから足元を、見下ろすだけ
でも、加齢のせいかすっかり萎えて、身震いがしてくる。

さあ～ゴンドラに乗ってみよう。殆ど見かけぬお客さんに、ゴンドラは動き続け、手持ち無沙汰の係員が礼々しく出迎え
安全乗車に誘導してくれる。殆どの空ゴンドラにすれ違いに乗っているのは我々だけ、独り占めの殿様気分でが味わえる
真冬は厳寒地の当地も、カンカン照りの真夏は日差しが強く、ゴンドラ内は暑く、乗車時に内輪を渡され、パタパタ扇ぎな
がらの乗船である。
ゴンドラの乗り入れ口付近は山の傾斜も緩く、ほぼ平行に近い勾配でタワーに張られたロープに吊り上げられ、ゆっくり
揺られながら空中の人になる。

標高820Mサマーゴンドラ山頂駅に到着する。駅からニセコアンヌプリ山頂まで道はあるが、山頂までは一応登山スタイルを装備
する必要がある。山頂歩きは諦め、近くのレストハウスの自然情報室である「エコル」に寄ってみる。
テラスから北側に山頂に雲を抱く標高1898Mの羊蹄山がデンと構える姿が目の前に迫ってくる。綺麗な稜線など"蝦夷富士"とも
言われ富士山に似た整った、見事な山容に感動する。雲に抱かれる山頂には直径700M、深さ200Mの火口がある。
羊蹄山を中心にぐるりと見回すと、これから向かう洞爺湖、有珠山、前日走りまくった積丹半島など、大パノラマが展開する。