3.難解なゲート潜り

通関で手間取る

出国前、現地からの報告で一部日本からの納入品に破損があり、代替品の計器を持参したが、「破損品 を持ち帰ることで交渉すれば税関はパスできるよ」と言われるままを鵜呑みに、搭乗者がそれぞれ満載の 手荷物を抱え並ぶ、税関のカウンターに戦場のような争いで殺到する。 検査台には見るからに悪代官のような税務官が蟻一つ見逃さないぞの鋭い眼光で待ち構えている。 当時は何にもなかった韓国で、世界規模のブランド力を持つ日本製品は韓国内では高価に売れることか ら日本からの入国に対する彼等の目は自然と目を光らせていたようにも思える。 言われるがままに身の回り品や現地作業の必携品の入ったトランクを開け、隅から隅まで徹底的に調べ られ、更には梱包材でぎっしり埋まっていたダンボール箱をナイフで手荒く開けられた。 「これは何か?価格は?」の問いかけに説明したが、全く信用せず、事務所から分厚いマニュアルを取り出 し、いい加減な類似品を探し出して「価格がこうだから、税金はこれだけ払え」と法外な価格を言ってき た。拙い英語を駆使して粘ったが、これ以上の交渉は無理と思い、品物は預けて、現地人に引き取って貰 おうと判断し、持参品の搬出は諦めた。

膨らむポケットに俄金持ち

この間の長いやりとりにカウンターは既にまばらになり、ある程度の予測したとはいえ立ちはだかる壁の厚さを思い知らされ、 悔しい思いで出口ゲートに急いだ。 所が、このゲートで一悶着、トランクと同様の扱いで、背中に掛けたショルダーに確認印がないと言う。 糞と思いつつも此処で切れても、らち明かず、再び検査台に戻り、押印し、ようやっと悪夢の通関場所から出られた。 さて、当面の行動に現地滞貨が必要であり、銀行窓口で100＄を交換したら26、800ウオンを受け取った。 最高紙幣が500ウオンであり、100ウオン、10ウオン主体の殆どが切れかかった札束をドンと渡され、余りの多さにビックリした。 その固まりの多さに確認もせず、むき出しの札束をポケットに分散し、ようやく納まった。 貨幣価値がわからぬまま膨らむポケットに俄金持ちか、それとも貨幣価値が低いのか、複雑な気持ちであったが、一方では すり切れた服を身にまとい、物欲しげに、周辺に立つ集団の群れの目線も、何とも気になった。

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