12.マイナス23℃を記録する世界

1)流量計おも壊してしまう

年開けて、寒波の襲来、朝の寒い時に遂にマイナス23℃記録、日中でも最高はマイナス10℃と凍 てつく寒さに閉口した。 ともかく暖房の無いところでは、長いことおられず。外の風通しの良い所では、耳がちぎれそう で全身を包む寒気に血流の末端である、手足が痛くなる。 自然の猛威は冷蔵庫をも必要とせず、ワインを外に出せば、たちまちシャーベット状に凍ってし まい、栓を抜いても、出てこないアイスワインなってしまった。 そんな折り、キルンが故障で止まってしまい、キルンの余熱の暖気で温まっていた建屋が冷え込 み、設置されている機械の思わぬ凍結事故が発生した。 キルン制御室から流量計が異常値を指示している連絡により、mr金と現場に走った。 そこには、流量計の鋳物部分がパックリと割れ、内部の水銀が外部に飛散する無残な姿に、呆然 とした。 流量計内部の水が凍結膨張し、その力で鋳物部分を破壊してしまったのだ。 キルンが止まらないと言う前提で設置場所の温度は下がらないと言う甘い判断が、凍結防止対策を 取らずに、事故を及ぼしていた。 流量計内部の水が凍結膨張し、その力で鋳物部分を破壊してしまったのだ。 キルンが止まらないと言う前提で設置場所の温度は下がらないと言う甘い判断が、凍結防止対策を 取らずに、事故を及ぼしていた。

修復する為に、内部の水銀を回収しようとしたが凍結している。 トーチランプで要部を温め、溶けた水と水銀が糸状になって出てきたが、外部の冷え込みに水銀の受け皿ではみるみるうちに水が氷だ し、目の前で山形の氷になってしまった。 更に濡れた軍手が氷だし、外したビスやボルトなどの金属部品は軍手に吸いつかれるようにべたべたと付いてくるなど、極寒の中での 実務体験に自然の凄さを思い知らされた。

2)コンプレッサー破損で解雇

何時も通る正門と脇の掲示板

この寒波襲来の時期に前後して、所内のユーテリテイ設備として 重要なコンプレッサーの水抜きを怠りコンプレッサーが破損した。 工場門の脇に立つ、掲示板に出退勤の社員の群れが、くいいる 様に見ていた掲示内容は 「担当する職員他2名は職務怠慢で コンプレッサーを破損させたこと で解雇する」と言う工場長命であった。 人余り、就職難を背景に気の毒な処置でもあったが、ことの重さを 判断し、有無を言わずに発令する厳しさに、自然の猛威は大事な職 まで呑み込んでしまった。 情け容赦なく、即断で首切り・貼り出し掲示での戒めに、身をすくめ て見る思いをした。

13.歴史の悪感情を背負って

1)給料日は気をつけろ

廻りは田圃、暴漢に追われ逃げた

一昨日から、日中は零度を越え、嘘の様な温かさに頑固に固まっていた氷 も溶けだし、松鶴荘の前の道も雪溶けて、小川の様に水が流れだした。 あの寒さの中、歯を食いしばってやった屋外の作業も、温もりと共に制約も なく効率的に仕事は進められ、何時に達成感があった。 赴任してからの生活環境の馴れから、気も緩み、工場から松鶴荘の帰りは 一人であったが、イルボンサラム(日本人)が何だとか言いながら、酒臭い匂 いをただ寄せながら、しつこく迫ってきた。 今日は彼等の給料日、退勤時に近くで一杯やって、気も大きくなり、気炎を あげているところ、目の前に格好の鴨が目に入り、やってしまえとばかりの複 数の群れに遭遇してしまった。 しまったと想いながら、ともかく、逃げるが勝ち、田圃の畦道から坂道を脱兎の ごとく走り、松鶴荘に駆け込んだが、玄関前で何やら息巻き、暫くして引き揚げ ていった。 それ以上のことはなかったが、止める者もいなく、過去の怨念の憂さ晴らし、そ の根っこにある歴史感情が何かあるごとに爆発するが、耐えることしかないこと に憤りさえ感じた。

暫くしてから、工場の掲示板で次のような掲示があった。 「日本人に対して、最近不祥事件が頻発しているが、何人も敬愛の念を持って接し、何か日本人に対して意見や文句がある場合は所属の上司 を通して、幹部に具申する様、徹底して貰いたい。また、日韓親善の為にも節度ある行動を・・・・・・」工場長 とまあ、こんな掲示が出るぐらい、反日の渦は根強かった。 国交開いて間もないこともあって、対日感情は、良くなく、建設スタッフの間でも工場近くのドイツのポリジウス社やフンボルト社の建設された セメント工場と比較され、機械の性能と仕事ぶりが感心のまとであったが、総じて冷やかなものであった。 しかし、この極寒の地で極めて慎み深い生活の中で「日本人技師はドイツ技師より良く働く」と言う評価も僅かな好日家の声もあり、徐々に浸透 していったことも事実で、一方ではその言葉に勇気づけられた。

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