<初めての世界はこんなもの、皆バタバタと腰を落とし天空を仰ぐか、前のめりに山側に次々と倒れる。
「何時までも寝てんじゃねえよ」辛うじて立つ同僚が冷ややかに嘲笑する。
おじさんたちの哀れな姿を前に、若いお兄ちゃんがあざ笑うようにストック裁きも鮮やかに走り抜ける>

◇恐る恐る雪面での晴れ舞台

<漸く雪面に立ち、僅かな傾斜に恐る恐る、ゆっくり発進する。ちょっぴりテールを開き上半身は回転方向とは
反対側に体を捻り、一応格好はついている基本中の基本ボーゲンの姿から滑り出し>

(装着品でがんじがらめ)

足首も曲がらぬ丸でギブスのような大きなスキー靴履いて恐る恐るスキーの上に載せスキーの
金具ビンディングにはめ込む。
スキー板と足がびったりと装着され、最早、足の自由度はスキー板に一体で拘束され最早足の
自由度はなくなる。丸で足が重石に付けられたロボットの様で拘束状態になる。
恐る恐る、雪面を滑らせる。当初は初めてスキーを付ける人と全く変わらないと、思わず我を振り
返り、想像以上の難しさにスキーを履く前の、意気込みが飛んでしまう。

(晴れての滑り出しは)

こうして、恐る滑り始め、スキーの上に乗り遅れまいと、倒れずに姿勢を保つのが精一杯であった。
こんな滑り出しから始まったが、二日目になって傾斜地の折り返しで、滑り終わりが山側に向かって
急カーブで曲がる『山廻り』が3回に1回は格好良く曲がれるようになる。滑るのもおのれ、体感だけ
に伝わる感覚だけに自己過信かも知れないが、スキーの醍醐味の序の口をちょこっと味わったに過
ぎない。
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