知床五湖から、ウトロへ戻る。心なしか日も傾き、薄すらと周辺が暗くなりかかり、日の短くなるこの時期、初めて行くホテル探しの
為にもせめて真っ暗に成る前に帰りたいと、前がかりに国道を急ぐ。車中から浅い繁みに同系色の物が動き、鹿であることを発見
する。早速、車を止めて、鹿の姿を追うと、やはり警戒心があるのか、餌の草を食いながらも背を向けて離れて行く。艶々した綺麗
な毛並みが印象的で、それが確認出来る位に近接して、カメラに納める事が出来た。

こんな近くまで寄っても、人間様を全く無視し、ひたすら草に食らいついている。無警戒の姿に、これが本当の野生の鹿なので
あろうか、憎たらしい位に落ち着きはらい、マイペースを草をあさっている。研ぎ澄まされた立派な角、隆々とした筋肉質のボデ
イが、いざ戦いの戦闘能力を持つようで、「あんなのが頭を下げ突っ込んで来たらどうなるだろう」とこれ以上の近接は恐怖さえ
感じた。野生の営みをこんな近接して見えることに驚き、改めて知床の現実に感動さえ覚えた。

すると、どうであろう。太陽が沈むに連れ、厚い雲に覆われていた太陽が雲を潜って、顔を出し、海面が真っ赤な束になって
こちらの方に向けて光輝いた。殆ど真っ暗なオホーツク海、夕日を浴びた海面がうろこのような縞模様が神秘的で幻想的な
世界を作り出している。静かな欄干に多数のカメラから、休み無くシャッター音が繰り返され、この日の美しく終わりを告げる一
時を捉えていた。こんな風景が確かめられるのも北海道の魅力の一つかなと思うぐらいの印象的なその日の幕引きであった。

ウトロに近いブユニ岬でウトロ岬とそれに囲まれたウトロ港を一望出来る位置で夕日を納める。ご覧の通り、沈みかけた太陽に
市街は暗く、正に夜のとばりに入ろうとしている。夕日の名所であるせいか、カメラマンが大勢欄干に自慢の名器を構え、それぞ
れ決定的瞬間を捉えようと虎視眈々と待っている。
ウトロ港は全く、浪静か、このウトロ港から一昨年、船で知床半島を周回したが、訪れた数日前、波荒れ欠航した事が全く信じら
れない位にオホーツクの海は静かであった。
生憎西側は雲が立ち込め、果たしてその瞬間に巡り会えるか、落ち行く夕日の姿を忍耐強く、待ち受けた。

更に別の所で国道に近い、道脇に立派な角を付けた鹿を発見する。国道脇の土盛りされた傾斜地の下はご覧のような渓流が流れ、
草を食べ、水を飲みに、彼らが生き続けるフィールードがこんな道路沿いまで来ている。