愈、伐採作業にかかる。等身大の高さに鋸を入れる。徐々に頂部の重さに傾ぎ、手を差し伸べる間もなく、一瞬に
して「ズシン」と道路側に倒れる。
綱でもかけ、安全に誘導すべきであったが、予想以上の重さに、為す術もなく、ただただ成り行きに任せてしまった。
幸いに実害はなかったが、正に倒木の終末を告げる歴史的な瞬間であった。
写真は夏つばきの頂部の一部分である。頂部に向かって、幹の部分が別れ、更に小枝になって分離していく。枝の
末端は正にツボミにならんとする姿を残して、完全に固化していた。
幹から枝先まで生命力の根源を失われ、唯の巨大なモニュメントであった。

裁断した幹の断面を監察する。年輪がしっかりと残され、推定50年近くと読みとれる。夏つばきの生誕以来、その間の
成長ぶりと風雪をこの年輪がしっかりと語り伝えている。

幹の部分は直径10㎝余、長さ 50㎝程に分断し、搬出可能な形態に加工する。何本にも渡る巨木の切断は
一向に進まぬ、刃先の進行で、休んでは取りかかりの繰り返しで、難渋を究める。
腰をかがめての、辛い姿勢で、1本の切り落としに、腰痛を伴う体力消耗の気合と根性の戦いであった。