戦線は難敵相手に戦線が、大陸に深く拡がり多くの犠牲者も生れた。
我々は純粋な歩兵部隊であり、連隊本部付の配属で、激戦地には行かないこともあって比較的楽であった。しかし、
連隊長が敢えて激戦地に臨めば、付いて行かざるをえず、一緒に山に駆け登って、連絡兵として付いていった。
その時に悲劇が生れた。
9月1日、南京から櫓山の山に登って、連隊長が「これだけで占領したのだから、櫓山へどんどん入るんだ」と語った。
その直後扇子を使って、暑い暑いと扇いでいたら、敵の標的になったのか「バーン」と言う音を残して、狙撃兵から撃
たれ即死であった。櫓山作戦で上海で加納治雄連隊長戦死し、引き継いだ飯塚国五郎連隊長も、追うように秀報寺
山で戦死した。
その連隊本部に居た私も狙撃され、一発で、射抜かれ貫通銃創を受け重傷をおった。静脈を切ったが、動脈に至らな
かったのが幸いし、一命を取り止め大事に至らなかった。そこで止血してもらい、兵站病院に収容された。

負傷後、南京の兵站病院に収容される。更に揚子江から病院船で輸送され東京に返る。上山田の旅館が、陸軍病院
として使われ、療養所で傷病兵が収容され療養生活を送った。此処でひたすら療養し、回復に務め、退院したが、いまだ
に手がしびれ、親指が動かない後遺症もあり、完全に直ることはなかった。
上山田の温泉療法で2年ぐらい居てから東京に戻った。