某月某日は怪しき天気であった。
朝から何となくめまい気味も慢性的な寝不足からと、思いつつ、雨の中、外の冷気で吹っ飛ぶだろうと日課としている
散歩に出た。
傘をさしてまで行くこともあるまいと休んでも良かったが、毎朝続けている変なルーチンに駆り立てられ家を出てしまった。
家を出るときは大したことなかったが、途中で本格的な雨に遭遇し、止みそうもなく、視界を遮る傘を差しながらの、悪コ
ンディションに、早く帰りたい一心で、加速をつける。
前傾姿勢は寄り一層、前かがりになり、加速ついた体を転倒しまいと、足先に視界は集中し投げ出す左右の足は最早、
制動しかなかった。

平坦な道なら未だしも、傾斜のある斜面では、加速がつき、勢いのまま、足元が怪しく、ふらつき始め、既に危険な状況
に踏み入れた。
1時間半の走行コースも終盤、駅前の人ごみを抜け、ロータリから枝道の一部である、坂道に入る。森林に覆われ公園の
外周部分の崖下沿いは　湧き水が溢れ、豊かな自然の中、延々と坂道が続くが、最早風情を確かめる余裕もなかった。
アップダウンを繰り返し、怪しい足取りに、ただ事ならぬ状態にあることに気づきながら、雨の中何とか克服し、早く帰りたく、
ブレーキの利かない暴走車のように益々加速してしまった。
我が家に近い場所に辿り付きほっとしたのか、平坦な路上の角で、曲がり切ろうとして、傘を差しながら、最早制動は効かず
思い切り、前のめりに倒れてしまった。
雨の中、無様な格好で、暫く立ち上がることも出来ず、そのまま横に倒れたままであった。
どのぐらい時間が経ったか判らないが、見っともないが蹲っていたが、再び立ち上がり何とか我が家に辿り着いた。